メータ&ロス・フィルによるリストの交響詩集を聴いて

メータ&ロス・フィルによるリストの交響詩集(1971年録音)を聴いてみました。
収められている作品は、下記の3曲。
≪フン族の戦い≫(交響詩第11番)
≪オルフェウス≫(交響詩第4番)
≪マゼッパ≫(交響詩第6番)

メータは、リストの交響詩に深い愛着を抱いているようでして、1990年代にもベルリン・フィルとソニー・レーベルへ同様の録音を行っています。

さて、交響詩は、主に文学的・絵画的なテーマを、オーケストラによって奏で上げられる標題音楽で、原則として単一楽章で切れ目なく演奏される作品、といったふうに説明できましょうか。
この形態の創始者が、他でもなくリストなのであります。リスト(1811-1886)は、1849年に最初の交響詩≪山に聞こえるもの≫を書き上げ、生涯に13曲の交響詩を作曲しています。

それでは、ここでの演奏について。
この音盤の存在は、あまり広く知られているものではないかもしれません(そもそも、リストの交響詩自体が、あまり人気がないようにも思えます)。しかしながら、ここでは、途轍もなく見事な演奏が繰り広げられているのであります。
手持ちのLPは平成10年11月26日に中古で購入したものになります。正直、あまり期待せずに購入したのですが、聴いてみてビックリ。聴き応えの充分な演奏に目を瞠ったものでした。骨太で、聴かせ上手な演奏。そう、交響詩という物語性を持った音楽を、語り口巧みに、そしてダイナミックに奏で上げたものとなっている。
全編を通じて、輪郭線がクッキリとした演奏となっています。そして、オケの鳴り方が実に心地よい。エネルギッシュでドラマティックな演奏ぶりで、各曲でのクライマックスの築き方も見事。
総じて、壮麗な演奏が展開されています。音楽を存分に煽ってもいる。その結果として、至るところで「うねり」が起きている。そんなこんなによって、逞しい生命力を備えていて、かつ、頗るスリリングな演奏が繰り広げられることとなっている。抒情性の高い≪オルフェウス≫でも、骨太で芯のシッカリとした音楽が奏で上げられている。更に言えば、全3曲を通じて、ロマンティックな雰囲気を湛えた豊麗な音楽づくりが為されている。

これらの作品に刻み込まれている「音楽絵巻」を、心行くまで堪能することのできる演奏。
現在は、1965年にウィーン・フィルと録音した≪前奏曲≫(交響詩第3番)もカップリングされた形でCD販売されているようです。
メータによるリスト集、お薦めですよ。