ベーム&ベルリン・フィルによるっモーツァルトの協奏交響曲を聴いて

ベーム&ベルリン・フィルによるモーツァルトの2つの協奏交響曲(1964,66年録音)を聴いてみました。
ヴァイオリンとヴィオラのための作品の独奏者は、ブランディス(Vn)とカッポーネ(Va)、管楽器のための作品の独奏者は、シュタインス(Ob)とライスター(Cl)とザイフェルト(Hr)とピースク(Fg)。全員がベルリン・フィルの首席奏者であります。
この2曲は、私の愛してやまない作品であります。とりわけ、管楽器による作品のほうが!!

さて、ここでの演奏について触れていきたいと思います。
ベームらしい謹厳実直な演奏となっています。音楽全体がキリリと引き締まっていて、凛としていて、決然としている。そして、重心を低く採りながら音楽は進行してゆき、その歩みや響きは、充実感がいっぱい。
ある種、いかつい面構えをしたモーツァルトであるとも言えそう。しかしながら、その奥底には優しさを湛えたものになっています。更に言えば、ちらりと見せてくれる微笑みが、モーツァルトらしい愉悦感を引き立ててくれている。そう、「柔」よりも「剛」の優ったモーツァルトと言えるような中、時おり見せる「柔」の顔がまた頗るチャーミングなのであります。そして、筋肉質でありつつも、ふくよかさも感じられるところが、ベーム&ベルリン・フィルによるモーツァルトの真骨頂だとも言えましょう。
1970年代に入って、ベームは管楽器のための協奏交響曲をウィーン・フィルと再録音しており、そちらでも謹厳実直な音楽づくりをベースにしながらも、柔らかさを前面に押し立てながらの典雅な演奏を披露してくれています。それに比べると、このベルリン・フィル盤は、より堅固な演奏となっている。「壮年期」のベームの心意気のようなものをそこここに感じ取ることができる。そのようなこともあり、格調の高さや、構成面での立派さなどにおいては、このベルリン・フィル盤のほうに軍配を上げたくなります。

半世紀以上前のベルリン・フィルの首席奏者たちによる独奏も、技巧的にも音楽センスにおいても非の打ちどころがなく、見事であります。そのうえで、特筆すべきは、全ての独奏者の音色や響きが、芯がシッカリとしていつつも、まろやかや輝かしさを備えているという点で、統一感があるというところでありましょう。しかも、音楽の「喋り方」が均質でもある。そのような中で、緊密な会話が為されてゆく。
そんなこんなのために、安定感が抜群の独奏が繰り広げられていて、かつ、ベームのキッチリカッチリとした音楽づくりの中で、音楽は力強く飛翔してくれています。

豊饒なモーツァルト演奏。そして、聴後にズシリとした手応えの残る充実のモーツァルト演奏。そんなふうに言える演奏だと思います。