マッケラス&チェコ・フィルによるスメタナの≪わが祖国≫を聴いて

マッケラス&チェコ・フィルによるスメタナのわが祖国1999年 プラハの春ライヴ)を聴いてみました。
NML
(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

マッケラスは、私が絶大な信頼を置いている指揮者の一人でありますが、ここでも素晴らしい演奏を繰り広げてくれています。その特徴を端的に申せば、逞しい生命力の籠った演奏になっている、と表現できましょう。
力感と熱気に溢れている。プラハの春音楽祭での演奏ということもあるのでしょう、演奏者たちの入れ込みの強さがヒシヒシと伝わってくる演奏が繰り広げられています。そう、意志の強さのようなものが至る所から滲み出ていて、熱量の高い演奏になっていると言えそう。そのことがまた、演奏に逞しさを与えてくれているように思える。
しかも、粗野になるようなことは全く見受けられません。明瞭な筆致による演奏が繰り広げられていて、目鼻立ちがクッキリとしている。そして、丹念に、精妙に、かつ、情感を込めながら、音楽は奏でられてゆく。更に言えば、劇的で、雄渾な音楽が鳴り響いている。音楽がそこここでうねってもいる。
それらはひとえに、ここに会している演奏者たちの、スメタナへの敬愛ゆえなのでありましょう。
そのうえで、決して外面的な効果を狙っている訳ではないように思えるのですが、とても晴れやかであり、華やかであり、輝かしい。明快にして明朗で、力強い音楽となっている。そう、なんとも祝祭的な演奏が繰り広げられているのです。真摯でありつつ、いい意味で煽情的でもある。しかも、身のこなしがしなやかでもある。息遣いが頗る自然であり、かつ、豊かでもある。この辺りから、マッケラスの、音楽への誠実さや、音楽センスの豊かさや、といったようなものがハッキリと感じ取ることができると言いたい。

この作品の神髄に触れることのできる演奏。そのような表現が当てはまるような、なんとも魅力的な演奏。
作品の音楽世界にグイグイと引き込まれていきながら、かつ、生彩感に溢れた音楽に触れることのできる、素晴らしい演奏であります。