ラトル&バーミンガム市響によるマーラーの≪大地の歌≫を聴いて
ラトル&バーミンガム市響によるマーラーの≪大地の歌≫(1995年録音)を聴いてみました。
テノール独唱はペーター・ザイフェルト、もう一人の独唱はメゾ・ソプラノではなくバリトンが配されていて、トーマス・ハンプソンが務めています。
スッキリとした佇まいのマーラー演奏となっています。贅肉を削ぎ落としたかのような演奏ぶりで、キリっと引き締まっている。音楽が粘るようなこともない。ここには、豊麗な音響で厚塗りされたかのような音楽、或いは、情念的でドロドロとした音楽とは対極的な音楽が鳴り響いています。そうであるが故に、清涼感の漂うマーラーになっている。
整然としていて、割り切りが良くて、見通しも良い演奏。更に言えば、精巧な音楽が奏で上げられている。細部の磨き上げ方が巧緻でもある。そのぶん、純度の高い演奏になっているとも言えそう。
そのような美質を備えていると言えそうなのですが、正直なところ、もう少しアグレッシブな、そして、激情的な演奏であって欲しいという気持ちが湧いてきました。ちょっと、サッパリし過ぎているかな、と。もう少し、体温の高い演奏であって欲しかったな、と。
しかしながら、聴き進むにつれ、このようなスタイリッシュで清々しいマーラーも時には良いものだな、という思いも湧いてきます。
2人の独唱者もまた、そのようなラトルの音楽づくりに相応しい。とりわけ、ハンプソンによる、サラッとしていて、滑らかな歌いぶりは、ここでのラトルによる演奏ぶりにピッタリだと言えましょう。
暗鬱な気分に浸るようなことなく、爽やかな気分でマーラーを聴きたい、という方にお薦めしたい演奏であります。