アバド&ベルリン・フィルによるマーラーの≪千人の交響曲≫を聴いて

アバド&ベルリン・フィルによるマーラーの≪千人の交響曲≫(1994年 ライヴ録音による正規盤)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

スッキリと纏め上げられている演奏であります。颯爽としてもいる。そして、実に見目麗しい。
整然としていて、明快で、明朗な演奏だとも言えましょう。難しいことを考えずに、この作品の音楽世界にス~~っと入り込めるような、平明さを持っているように思えます。それでいて、充分に劇的で、この巨大なスケールを持った作品に相応しい昂揚感にも包まれている。
なるほど、あっさりし過ぎていると言えるかもしれません。もっと、ドロドロこってりとした味わいを出して欲しい、と望みたくなる余地は十分にあるでしょう。しかしながら、ここでのサラリとした演奏ぶりに物足りなさを感じるようなことは、少なくとも私にはありませんでした。
サラリとしていつつも、鮮やかであり、輝かしくて、躍動感に満ちていて、気宇が大きくもある。必要十分にうねってもいる。そんなこんなによって、この曲に吹き込まれている「生命力」を、存分に生かし切ってくれている。しかも、清々しい感興を乗せながら、しなやかに音楽を進めてくれている。そんなふうに言える演奏ぶりだと思えます。

スッキリ爽快、スマートな音楽世界の中から、≪千人の交響曲≫の魅力が浮かび上がってくる、なかなかに魅力的な演奏であると思います。