アルゲリッチ&コンドラシン&バイエルン放送響によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴いて

アルゲリッチ&コンドラシン&バイエルン放送響によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(1980年ライヴ)を聴いてみました。

世評の高い、この演奏。きっと、愛聴されている方も多いことでしょう。
その内容はと言いますと、「天馬空を行く」という表現がピッタリな快演、と言えるのではないでしょうか。
それにしましても、なんという疾駆感に溢れた演奏なのでありましょう。豪放で、熱気に満ちている。しかも、敏捷性に富んでいて、しなやか。頗るスリリングであり、感興豊かでもある。音楽が生き生きとしていること、この上ありません。
ピアノもオーケストラも完全燃焼。音楽全体が高らかに鳴り切っている。更に言えば、誠に歯切れが良い。
しかも、ただ単に豪快であるだけかと言えば、さにあらず。曲想の移り変わりに応じた「音色」や「音楽表現の色調」の変化の細やかさも見事であります。一気呵成に音楽を奏でてゆくかと思えば、メランコリックで繊細な表情や、はっと息を飲むような美しさが現れたりもする。音楽を慈しむような素振りを、あちこちで見ることもできる。
要は、音楽の織りなす綾が、実に細やかなのであります。ホットでありながら、音楽の造りが頗る丹念でもある。このことは、ピアノにも、オーケストラにも当てはまりましょう。ピアノとオーケストラとが混然一体となっているとも言いたい。

いやはや、唖然とさせられる程に見事な演奏であります。そして、聴き手を惹きつける力の強大な演奏だとも言えそう。
これから先も、きっと、多くの音楽愛好家を魅了し続けてゆくことでありましょう。