ヨッフム&シュターツカペレ・ドレスデンによるブルックナーの交響曲第3番を聴いて

ヨッフム&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるブルックナーの交響曲全集から第3番(1977年録音)を聴いてみました。

ヨッフム(1902-1987)が75歳のときの演奏ということになりますが、壮健で、気魄の漲っている演奏が展開されています。決して力任せな演奏になっている訳ではないのですが、力強くて、骨太な音楽が鳴り響いている。そう、骨格がシッカリとしていて、充分に逞しい演奏が繰り広げられているのであります。適度に壮麗でもある。しかも、底光りするような美しさに満ちている。
それにしましても、ここでの演奏は、いつものヨッフム以上にドラマティックなものになっていると言えましょう。とりわけ、第1楽章の終盤では、畳みかけるようにして音楽を掻き鳴らしていて、ある種、スリリングな演奏となっている。第2楽章での盛り上がりで吹き鳴らされるホルンによる咆哮や、トランペットによる朗々とした強奏や、低弦の鋭いアタックなども、誠に鮮烈であります。そんなこんなによって、コントラストの明瞭な演奏となっている。
と言いつつも、ベースにあるのは、ヨッフムならではの虚飾のない誠実な演奏ぶり。そのために、折り目の正しい音楽となっています。ブルックナーならではの拡がり感や、敬虔な雰囲気も、自然な形で描き出されている。そう、先ほど例示した鮮烈な演奏ぶりも、誇張のない演奏表現として作品の中に溶け込んでいると感じられてならないのであります。

そのうえで、SKDの美音の、なんと魅力的なこと。その響きは、決して派手ではないものの、艶やかで、「奥行き感のある煌びやかさ」と呼べるような輝かしさを持っている。キリッとしていて、清冽で、それでいて豊麗な音楽が鳴り響いている。
「底光りするような美しさ」の多くは、SKDに依るものであると言いたい。

惚れ惚れするほどに素敵な、そして、見事な演奏であります。