ロジェストヴェンスキー&モスクワ放送響によるシベリウスの交響曲第1番を聴いて

ロジェストヴェンスキー&モスクワ放送響によるシベリウスの交響曲全集から第1番(1974年録音)を聴いてみました。

骨太で逞しくて、雄大なシベリウス演奏であります。熱い血潮の燃え滾るような演奏だとも言えそう。艶やかで輝かしくもある。それ故に、シベリウスの作品に対して、しばしば語られる、寒々とした音楽だという感覚からは程遠い。
(もっとも、私は、シベリウスの音楽は、本質的には情熱的で熱いものだと看做しております。そのような一面を、ここでのロジェストヴェンスキーは、十二分に示してくれている。)
決して爆演になっている訳ではありませんが、野太くって、濃厚なシベリウス演奏が繰り広げられている。
そのうえで、ある種の豪壮さが感じられます。推進力に溢れていて、煽情的でもある。音楽全体がうねってもいる(特に第4楽章において)。
それでいて、決して粗野な演奏にはなっていません。力任せな演奏でもない。むしろ、洗練味のようなものが漂ってくる。そして、充分に抒情的で感傷的で夢幻的な雰囲気を湛えている。キビキビとした躍動感があり、推進力に満ちていて、明快な演奏が展開されている(全編を通じて言えますが、特に第3楽章において顕著)。
そんなこんなによって、シベリウスが34歳の時に完成させた最初の交響曲が持っている、覇気に満ちていて、ドラマティックでロマンティックな雰囲気を湛えている音楽世界が、鮮やかに描き出されている。

ユニークな特徴を持っていて、かつ、頗る魅力的で、作品の世界観を堪能することのできる、素敵な演奏であります。