カザドシュ&セル&クリーヴランド管によるリストのピアノ協奏曲第2番とウェーバーの≪コンツェルトシュトゥック≫を聴いて

カザドシュ&セル&クリーヴンド管によるリストのピアノ協奏曲第2番とウェーバーの≪コンツェルトシュトゥック(小協奏曲)≫(1952年録音)を聴いてみました。

克明で、粒立ちの鮮やかな演奏であります。しかも、毅然とした音楽が示されている。ここでの演奏のそういった特徴は、カザドシュにも、セルにも当てはまると言えましょう。その結果として、純粋な美しさを湛えた音楽が鳴り響くこととなっている。
基本的には、キリッと引き締まった演奏となっています。しかしながら、決して厳格な表情だけを見せている訳ではなく、しなやかで伸びやかでもある。そして、充分なるロマンティシズムが感じられる。確かに厳格な演奏ぶりなのですが、暖かみが感じられもする。
更に言えば、キビキビとした運動性が示されてもいる。逞しい生命力が漲っていて、エネルギッシュにしてドラマティックな演奏が展開されている。

そのうえで、カザドシュのヴィルトゥオーゾ性の高さも、しっかりと認めることができます。それは、これ見よがしな技巧の誇示ではなく、音楽をキレッキレに再現してゆくためのものでもなく、音楽を美しく再現してゆくために駆使されている安定した技巧、といった類のものだと言えましょう。そのために、リストでもウェーバーでも、過剰なまでに華美にならない範囲で煌びやかさを備えた演奏が繰り広げられてゆくこととなっている。
そのようなカザドシュを、セルは、巧緻にして躍動感に満ちた演奏ぶりを示しながら、がっしりと支えている。

格調が高く、かつ、充分なる熱気を孕んでいる演奏。
いやはや、なんとも見事な、そして、美感に満ち溢れている、頗る魅力的な演奏であります。