オイストラフ&クリュイタンス&フランス国立放送管によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴いて

オイストラフ&クリュイタンス&フランス国立放送管によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(1958年録音)を聴いてみました。


峻厳でありつつ、暖かみに溢れている演奏となっています。
峻厳な雰囲気を形作っているのは、オイストラフに依るところが大きいと言えましょう。一方で、暖かみが感じられるのは、クリュイタンスの貢献が大であると思えます。
そのような2人に共通しているのが、真摯にして、高潔な音楽を奏で上げているということ。そして、とても緊密な音楽を奏で上げているということ。
と言いましても、決して堅苦しい演奏になっている訳ではありません。ロマンティックな感興を湛えている音楽が鳴り響いている。ふくよかで、しなやかで、まろやかで、艶やかでもある。更には、情緒連綿たる風情を備えている。
それらについては、クリュイタンスに依るところが大きいように思えますが、オイストラフのヴァイオリンからもシッカリと感じ取ることができます。骨太で壮麗で、堅固で逞しくて、カッチリとした様式感を描き出しながら、粛然とした演奏を繰り広げてゆき、そのうえで、親しみやすさや情趣深さを備えているヴァイオリンが展開されている。骨太さのなかに、滋味深さが感じられる。そして、これはオイストラフによる演奏の多くから感じられることなのですが、とても艶やかで、かつ、豊麗でもある。
そのようなオイストラフを、クリュイタンスは格調の高い演奏ぶりを示しながら、暖かく包み込んでゆく。しかも、クリュイタンスによる音楽づくりも、必要十分に逞しくて、気宇の大きさを備えている。

何と言いましょうか、全編を通じて、実に奥行きの深い音楽が鳴り響いている。
いやはや、なんとも立派で、かつ、素敵な演奏であります。

なお、カデンツァは、クライスラーによるものが使用されています。