ライナー&シカゴ響によるバルトークの≪弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽≫を聴いて

ライナー&シカゴ響によるバルトークの≪弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽≫(1958年録音)を聴いてみました。

数々の名演奏を遺してくれているライナー。≪管弦楽のための協奏曲≫もカップリングされているこの1枚は、そんなライナーの代表盤の一つとしての誉れの高い音盤だと看做されていると言えましょう。
なるほど、この演奏には、ライナーの美質がクッキリと刻まれていると思うのであります。

まずもって、とても鋭利な演奏となっている。切れ味の鋭さは半端ありません。そのために、音楽はクリアな相貌を示している。極めて緻密であり、巧緻である。そのうえで、とてもシリアスな音楽になっている。ある種、冷酷だとも言えそうなまでに。そして、客観性が頗る高い。

このような特徴は、ライナーによる多くの演奏からも窺えますが、この演奏ではいつもにも増して鮮明に表れていると言えそう。
その一方で、とても激しい音楽にもなっています。ドラマティックでエネルギッシュ。それは決してお祭り騒ぎになっているのではなく、凝縮度の高い音楽が示されている中に宿っている劇性の、なんと高いこと。
そこへ持ってきて、同じハンガリー生まれの大作曲家であるバルトークへの敬愛の深さも感じられるのであります。そう、一見冷たそうでいて、かつ、極端なまでにシェイプアップされた音楽となっているように聞こえて、その向こう側には、とても感興の豊かな音楽が感じられる。しなやかで、弾力性があって、暖かい(いや、もっと言えば頗る熱い)音楽が奏でられているのであります。

そのような演奏ぶりの先に、激情的でありつつも、純粋なる音楽美の宿っている音楽が鳴り響くこととなっている。

唖然とするほどに見事な、更に言えば、「ライナーの偉大さ」がギッシリと詰まっている、素晴らしい演奏であります。