クリュイタンス&パリ音楽院管によるラヴェルの≪マ・メール・ロア≫全曲と≪高雅にして感傷的なワルツ≫を聴いて

クリュイタンス&パリ音楽院管によるラヴェルの≪マ・メール・ロア≫全曲と≪高雅にして感傷的なワルツ≫(1962年録音)を聴いてみました。

なんと気品に溢れた演奏なのでありましょう。
しかも、艶やかな色彩感にも不足はありません。と言いつつも、決してケバケバしい色合いをしているのではなく、エレガントな美しさを湛えている。直線的な音楽づくりではなく、ふくよかなフォルムをしている。頗るしなやかでもある。そして、微笑みかけてくるような優しさがある。
それでいて、充分に律動感のある演奏が繰り広げられている。
そのうえで、≪マ・メール・ロワ≫では、この作品ならではのメルヘンの世界に遊ぶような、夢幻的な味わいに満ちた音楽が奏で上げられています。浮遊感のある音楽となってもいる。
また、≪高雅にして感傷的なワルツ≫では、弾力性を帯びていて、かつ、「品格を伴いながらの煌びやかな音楽世界」と呼びたくなるようなものが広がってゆく演奏が繰り広げられている。

クリュイタンス&パリ音楽院管によるラヴェルの管弦楽曲集は、私にとっての大事な大事な宝物となっていますが、その中でも特に、この1枚は、はなはだ強く音楽を聴く幸福感に包まれてきて、陶然となる。
神品。そのような表現が似つかわしい、素晴らしい演奏であります。