アンセルメによる≪プルチネルラ≫を聴いて

アンセルメ&スイス・ロマンド管によるストラヴィンスキーのバレエ音楽≪プルチネルラ≫全曲(1965年録音)を聴いてみました。

この作品は、ペルゴレージ(1701-1736)が作曲した音楽を素材にしながら編まれた40分弱のバレエ音楽。バロック期から古典派に移行しようとしていた時期を生きたペルゴレージの音楽が素材になっているということもあり、古典的な佇まいの中に、現代的でシャープな感覚や響きが織り込まれた音楽となっています。そのために、とても親しみやすくて、チャーミングな(キュートと言っても良いかもしれません)音楽になっています。そして、とってもオシャレ。私の大好きな作品の一つであります。
ちなみに、ストラヴィンスキーの作風がはっきりとした新古典主義になるのは1923年に作曲された≪管楽器のための八重奏曲≫からと見なされていますが、1919年に作曲された≪プルチネルラ≫は、その過渡期の作品と言え、素材から言っても、手法から見ても、最も新古典的な佇まいを見せてくれている作品であると言えましょう。

作品について書くのはこの辺りにしまして、ここでのアンセルメの演奏について触れてゆくことにいたしましょう。
均斉の取れた演奏であると言えましょう。アンセルメによる他の多くの演奏からも感じられるように、キリっと引き締まっていて、ひんやりとした肌触りが感じられ、凛とした表情をした演奏となっている。そのうえで、とても精緻でもある。どこにも誇張がなく、「何も足さない、何も引かない」といった言葉がピッタリな演奏だとも言えそう。
そして、実に生き生きとしてもいる。バレエ音楽らしい躍動感にも不足はない。と言いましても、決して有頂天になって誇らしげに踊るような素振りを見せている訳ではありません。何と言いましょうか、自制心を持ちながら気高く踊ってゆく(躍動してゆく)といった趣をもちながら、音楽は進行してゆくのであります。
そのようなこともあり、この作品の姿を、等身大の形で再現したような演奏になっていると言えそう。

このキュートでオシャレな作品の魅力を過不足なく味わうことのできる、素敵な演奏であると思います。