サロネン&フィルハーモニア管によるマーラーの≪悲劇的≫を聴いて

サロネン&フィルハーモニア管によるマーラーの≪悲劇的≫(2009年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

整然としていて、かつ、巧緻な演奏となっています。
変に屈折しているようなことはない。ドロドロとしていたり、情念的であったり、といったこともありません。率直であり、スマートに纏め上げられているマーラー演奏。しかも、明晰な音楽づくりがなされている。目鼻立ちがクッキリとしてもいる。
それでいて、冷ややかな音楽になっている訳ではありません。とは言いつつも、必要以上に熱かったり、刺激的であったり激情的であったり、といったようなことはなく、「人肌の温もりが感じられる熱さ」を伴った音楽が掻き鳴らされている、とでも言えば良いのでしょうか。そのうえで、息遣いが自然で、かつ、シッカリとした呼吸感を持っている。身のこなしがしなやかでもある。
そして、力感に不足はなく、充分なる流動性を持った演奏が展開されている。この点については、特に、最終楽章において顕著であります。その一方で、アンダンテ楽章では、抒情性に満ちていて、ある種、楚々とした音楽が鳴り響いている。

変な誇張が無く、スッキリとしていて、見通しの良い演奏。しかも、やるべきことをシッカリとやり尽くしていて、細部まで丹念に仕上げながら、血の通った音楽を奏で上げよう、といった意思のようなものが感じられる演奏となっている。それは、「音楽することへの責任感」の現れでもあるように思えます。
その結果として、端正にして、生命力が自然と溢れ出すようなマーラー演奏が繰り広げられることとなっている。純音楽的な美しさが滲み出してきてもいる。
このようなマーラー演奏も、なかなか素敵であります。

なお、第2,3楽章は、「昔ながらに」と言いましょうか、スケルツォ→アンダンテの順で演奏されています。