ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるブルックナーの交響曲第9番を聴いて

ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるブルックナーの交響曲第9番(1980年ライヴ)を聴いてみました。

峻烈にして、豊かな音楽世界の広がっている演奏であります。
ムラヴィンスキーならではの強靭な音楽づくりは、ここでも健在であります。速めのテンポを基調としながら、硬質な音楽が鳴り響いている。アンサンブルは鉄壁。巧緻な演奏が繰り広げられている。鮮烈で、彫りが深くもある。
スケールが大きく、昂揚感が大きくもある。
そのうえで、演奏全体が凛としています。キリっと引き締まっていて、緊密な音楽が鳴り響いている。
しかも、ロマンティックな薫りも強烈。むせび泣くような、いや、嗚咽するような感傷が、私を陶酔の世界へと誘ってくれる。
更には、音楽から気高さが感じられる。高潔であるとも言えましょう。謹厳にして、純音楽的な美しさに溢れている。そう、ここには、不純なものは一切含まれていないように思えてなりません。

ベートーヴェン、モーツァルト、ブラームスといったドイツ音楽でも、極めて説得力の高い演奏を聞かせてくれるムラヴィンスキーですが、ブルックナーもまた、実に見事。
(ブルックナーの交響曲第7番を演奏会に乗せることにしていたところ、ステージリハーサルが信じられないほどにうまくいったために「リハーサルのように本番はうまくいくはずがない」といって、演奏会をキャンセルしたというエピソードが残ってもいます。)
それにしましても、この第9番、畏敬の念が湧いてくるほどに素晴らしい演奏であります。