ジュリーニ&シカゴ響によるマーラーの≪巨人≫を聴いて

ジュリーニ&シカゴ響によるマーラーの≪巨人≫(1971年録音)を聴いてみました。

ゆったりとしたテンポ(演奏時間は、第1楽章のリピートが実行されたうえで57分ほどを要している)を基調としながら、たっぷりと奏で上げられている演奏が展開されています。
それでいて、音楽は全く弛緩していない。むしろ、緊張感の強い演奏となっています。キリっと引き締まっていて、堅固で、凝縮度の高い演奏となってもいる。それでいて、閉塞感に包まれた演奏になっている訳ではなく、充分なるエネルギーの解放と、晴朗な歌に溢れた演奏が展開されている。とりわけ、第3楽章において、誠実さを伴った歌心が強く感じられる。この辺りは、いかにもイタリア人指揮者らしいところだと言えましょうか。
そのうえで、伸びやかさや、輝かしさを備えている。必要十分にドラマティックであり、気宇が大きくもある。特に最終楽章での演奏は、鮮烈なものとなっていて、昂揚感に溢れている。
全編を通じて、じっくりと聞かせながらも、起伏に富んでいて、充実感に満ちた演奏が繰り広げられています。隈取りの鮮やかさが備わってもいる。
そのようなジュリーニの音楽づくりを支えている、シカゴ響の精緻なアンサンブルがまた、実に見事。キリっと引き締まっていつつも、鮮やかな印象を与えるのは、シカゴ響に依るところが大きいのではないでしょうか。とりわけ、最終楽章でのホルンやトランペットによる、朗々としていて、かつ、輝かしい演奏ぶりが、この演奏に大きな魅力を添えてくれている。

ジュリーニ&シカゴ響のコンビは、1976年録音のマーラーの交響曲第9番で一気に注目を集めるようになったという感が強い(とりわけ、我が国においては)ですが、その5年前に録音されたこの≪巨人≫の音盤も、聴き応え十分な演奏が刻まれていると言いたい。
端正にしてヴィヴィッドで、充足感に満ちている、素晴らしい演奏であります。