フェドセーエフ&モスクワ放送響による≪春の祭典≫を聴いて

フェドセーエフ&モスクワ放送響きによるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫(1981年録音)を聴いてみました。
このコンビによる実演は、1986年の来日公演で、一度だけ体験しています。その時のプログラムは、下記の通りでありました。
チャイコフスキー ≪ロメオとジュリエット≫
ストラヴィンスキー ≪ペトルーシュカ≫
ムソルグスキー ≪展覧会の絵≫
その演奏内容の詳細はもう覚えていませんが、「音の洪水」に身を浸すことへの快感を味わえたことだけはハッキリと覚えています。あんなにもパワフルな演奏には、初めて接したものでした。とは言いましても、決して粗暴な演奏ではなかったようにも記憶しています。
さて、この音盤で聴くことのできる≪春の祭典≫は、その時の体験が蘇ってくるような演奏となっているように思えます。

なるほど、パワフルな演奏となっています。胸のすくような豪快さがある。
しかしながら、決して粗暴な演奏となっている訳ではありません。磨き上げの丹念な演奏が繰り広げられている。巧緻であるとも言えましょう。そして、演奏時間が35分強であるということが物語っているように、音楽をまくし立てながら煽って行くのではなく、じっくりと腰を据えた演奏となっている。
とは言え、やはり力強さに満ちています。そして、勇壮な演奏となっている。金管は咆哮し、ティンパニをはじめとした打楽器群はあちこちで強打されてゆく。そして、全体的な感触としましては、洗練されているというよりも、野性味が感じられる。そう、逞しくて、野太い音楽となっているのであります。

ゆとりがありつつも、豪壮な音楽が掻き鳴らされている演奏。
充実感がいっぱいの、そして、聴いていて実に面白い、素敵な演奏であると思います。