コンドラシン&コンセルトヘボウ管によるブラームスの交響曲第1番を聴いて

コンドラシン&コンセルトヘボウ管によるブラームスの交響曲第1番(1980年ライヴ)を聴いてみました。
コンドラシン(1914-1981)は、1978年にコンセルトヘボウ管に客演中にオランダへの亡命を表明し、ソ連を離れて、西側での本格的な活動を開始しました。その後、コンセルトヘボウ管の常任客演指揮者に就任し、1982年にはバイエルン放送響の首席指揮者に就任することが決まっていたのですが、1981年に67歳で急逝。
コンセルトヘボウ管とはR=コルサコフの≪シェエラザード≫のセッション録音があるほか、幾つかのライヴ録音が遺されていますが、当盤はそのうちの1枚であります。

ここでのブラームスの1番の演奏内容はと言いますと、壮健な演奏となっています。骨太で、逞しくて、律動感に溢れた音楽づくりが為されている。そして、強靭で堅固な音楽が繰り広げられている。
やや速めのテンポで進められ、力強くて、熱量が高くて、大きな推進力を備えている音楽が奏で上げられています。と言いつつも、ロシア人指揮者によるブラームスだからと言って、豪放一本鎗で押し通している訳ではありません。音楽をあちこちで咆哮させている訳でもありません。むしろ、端整な音楽づくりが為されている。なるほど、充分に強靭な演奏ぶりではあるのですが、それは作品から乖離したものではなく、曲の内側から湧き上がるような力をそのまま率直に表してくれたような、そんな力強さを秘めたものとなっている。
そう、作品に元来備わっているエネルギーを、そのまま放出させていき、そのことによって燃焼度の高い演奏が成り立っている。そんなふうに言えるように思えるのであります。最後の場面でも、虚勢を張らずに音楽が自然と昂揚してゆき、その結果として誠に大きなクライマックスが築かれる、といったふうに感じられる。
(このクライマックスの部分では、ほんの一瞬、音をすぼめるような演出が施されていたりもする。)
そのようなコンドラシンによる音楽づくりに添えられている、コンセルトヘボウ管の厚みがありつつも芳しい響きがまた、なんとも魅力的であります。音楽に底光りするような輝きを与えてくれている。そして、しなやかさを与えてもくれている。
そんなこんなによって、頗る充実度の高い演奏となっています。
このような演奏に触れると、かえすがえすも、コンドラシンの急逝が惜しまれる。

いやはや、実に立派で、聴き応え十分な、素晴らしい演奏であります。