ホロヴィッツによるリストのピアノソナタ ロ短調を聴いて

ホロヴィッツによるリストのピアノソナタ ロ短調(1977年録音)を聴いてみました。
これは、ホロヴィッツ(1903-1989)が74歳になる年のコンサートをライヴ録音したものであり、翌1978年に迎えるアメリカデビュー50周年を記念して世に送り出された音盤であります。

それにしましても、なんとニュアンスの豊かで、多様性を備えている演奏なのでありましょう。
この作品での演奏でよく見られる、強靭なタッチによる剛毅な性格を浮き彫りにする、という要素もしっかりと示されている。そう、壮健にして力強い演奏となっているのです。ドラマティックであり、スリリングでもある。しかしながら、ただ単にそれだけではありません。
重層的で、重厚感のある演奏ぶりでありつつも、響きには透明感がある。しかも、輝かしさや艶やかさを持っている。凝縮度が極めて高くありつつも、拡がり感を持った音楽が展開されてもいる。
更には、テクニックに切れがあり、畳み掛けるような、或いは、鬼気迫るような迫力も充分。それでいて、繊細さを秘めている。ロマンティックであり、メランコリックでもある。曲想に応じて、とても夢幻的な音楽世界が広がることとなっている。しかも、全編を通じて、歯切れ良くて音の粒が立っていて、精緻で克明な音楽づくりが施されていつつ、流れが滑らかで、抒情性が豊かでもある。
そんなこんなのうえで、毅然とした演奏態度が示されている。情に流されるようなところが微塵も感じられないのであります。そのこともあって、壮大にして、昂然とした音楽が鳴り響くこととなっている。
そのような演奏ぶりを通じて、この作品の魅力がクッキリと浮かび上がってくる。

これはもう、異次元の素晴らしさを持っている演奏だと言えましょう。