ルプーによるシューベルトのピアノソナタ第20番を聴いて

ルプーによるシューベルトのピアノソナタ第20番(1975年録音)を聴いてみました。

繊細さと、詩情性の豊かさを前面に押し出しつつも、力強さにも不足ない演奏。大言壮語するような演奏ぶりではなく、ましてや力任せに弾きまくるといった演奏になっている訳ではないものの、逞しい生命力に貫かれている。そんなふうに言えるように思います。
ルプーと言えば、稀代のリリシストとして喧伝されたピアニストである、という印象が強いのではないでしょうか。なるほど、このシューベルトでも、抒情的な美しさを湛えたものとなっていて、清冽な音楽が奏で上げられています。と言うよりも、シューベルトの作品自体がそのような性格が強いために、ルプーの透明感のある情趣深い演奏ぶりが際立ってくる、とも言えそう。凛とした美しさを湛えてもいる。
更には、切々と語りかけてくるようにして、音楽は奏で上げられているとも言いたい。
その一方で、打鍵は思いのほか強い。そのために、決してなよなよした音楽になるようなことはない。儚い音楽に傾くようなこともない。むしろ、意志の強さや、芯の強さのようなものがハッキリと感じられる演奏となっています。毅然としてもいる。そして、必要以上にナイーヴな側面が強調されるようなことのない演奏となっている。
そのうえで、例えば最終楽章において顕著なように、流麗な演奏が繰り広げられている。たゆたうような流れに乗って、美しい音楽が鳴り響いている。そのような音楽づくりが、シューベルトの音楽の魅力を存分に伝えてくれている。

シューベルトのピアノソナタの音楽世界にドップリと身を浸すことのできる、そして、ジッと胸に沁み渡ってくる、素敵な素敵な演奏であります。