セル&クリーヴランド管によるシューマンの≪春≫を聴いて

セル&クリーヴランド管によるシューマンの≪春≫(1958年録音)を聴いてみました。

精緻にして、躍動感溢れる演奏となっています。
この作品に相応しい、晴れ晴れとした雰囲気に包まれています。それはもう、実に明朗な演奏となっている。それでいて、全く浮かれたところが無く、キリッとした佇まいが示されている。
音の粒が揃っていて、随所でキビキビとした動きが感じ取れます。誠に均整の取れている演奏ぶり。しかも、冷たさが一切感じられず、細部にまで血が通っていて、かつ、音楽が生き生きと躍動している。一つ一つの音が、弾け飛んでいるかのよう。身のこなしがしなやかでもある。これらのことは、多くのセル演奏に見受けられることではあるものの、ここでは他の演奏以上に弾けていて、かつ、しなやかに流れているように思えます。それが、春の喜びにダイレクトに繋がっていて、何とも心地よい。そう、この演奏には、知的な面での充実度の高さと、感覚的な喜びとが、バランスよく両立している。
更に言えば、旋律の裏で動いているハーモニーの推移も、クッキリと描き出されてゆく。このことは、第1楽章の序奏部などで、よく感知することができる。その様の、なんと見事なことでありましょう。また、第2楽章では、決して粘るようなことはないものの、豊かな歌が披露されていて、聴いていてウットリとしてくる。

全体的に、頗る巧緻で各楽器群の分離が良いうえで、晴朗であり、まろやかな音楽となっている。
セルの妙技を味わい尽くすことができ、かつ、この作品の魅力を堪能することのできる、なんとも見事な、そして、頗る魅惑的な演奏であります。