ルプー&プレヴィン&ロンドン響によるグリーグのピアノ協奏曲を聴いて
ルプー&プレヴィン&ロンドン響によるグリーグのピアノ協奏曲(1973年録音)を聴いてみました。
ルプーらしい、抒情的で繊細な味わいに溢れている演奏であります。清々しくもある。
なるほど、有名な冒頭部分は、鮮烈にして強靭な音によって開始されています。しかしながら、威圧的な雰囲気を伴っていない。かつ、透明感のある音楽が響き渡っている。この冒頭部分からして、ルプーらしさが全開だと言えましょう。
そう、ルプーによるグリーグは、とても透明感が高い。冷たい肌合いがしているとも言えそう。そのうえで、透き通るように美しい。透徹したピアニズム、と呼ぶに相応しいのではないでしょうか。
ちょっぴり儚げでもあるのですが、必ずしも「ひ弱な」音楽となっている訳でもありません。シッカリとした打鍵に支えられていて、活力の漲っている演奏となっている。そのうえで、この作品が持っているダイナミズムを充分が描き上げられていて、かつ、ロマンティシズムに溢れてもいる。最終楽章などは、充分に壮麗でもある。そして、第1楽章の第2主題で見られるように、ときにメランコリックな表情を見せてくれたりもする。
そのようなルプーに対して、プレヴィンもまた、精力的で充実感たっぷりな音楽を繰り広げています。恰幅が良くて、推進力豊かで活力に満ちた音楽を掻き鳴らしてくれている。安定感たっぷりでありつつ、音楽が存分に弾んでもいる。
ルプーの魅力と、それを支えるプレヴィンの魅力と、更にはこの作品の魅力とを堪能することのできる、素敵な演奏であります。