ハイティンク&コンセルトヘボウ管によるチャイコフスキーの交響曲第5番を聴いて

ハイティンク&コンセルトヘボウ管によるチャイコフスキーの交響曲第5番(1974年録音)を聴いてみました。

このコンビは、≪マンフレッド交響曲≫を含むチャイコフスキーの交響曲全集を完成させており、当盤はその最初の録音となったものになります。
(それ以前にも、第4,6番を録音していますが、全集では再録音されたものが収められています。)

さて、ここでの演奏はと言えば、なんとも誠実なものとなっています。堅牢なつくりをしている演奏だとも言えそう。
煽情的なところは皆無。先鋭的になるようなことも全くなく、全体的に丸みを帯びている演奏だとも言えましょう。そのうえで、地に足の付いた、堅実さが前面に押し出されている演奏となっています。それはもう、「品行方正」という言葉すら頭に浮かんでくるほどに。
しかしながら、「堅物な」演奏になっているというふうには言いたくありません。音楽の流れは自然で、しなやか。しかも、力感にも全く不足はない。作品が持っているエネルギーが、それぞれの局面で適切に放射されていて、充分なまでに逞しい音楽が奏で上げられています。そして、第2楽章をはじめとして、適度にロマンティックな雰囲気を湛えてもいる。
そんなこんなによって、充実感がいっぱいな音楽となっている。

なるほど、チャイコフスキーならではの「泥臭さ」のようなものは薄いと言えましょう。その分、純音楽的な美しさに満ちたものとなっています。そう、響きも音楽の佇まいも、誠に美しい音楽が鳴り響いている。そして、洗練度が極めて高い。
そのうえで、「ここに、確かな音楽がある」と言いたくなるような実在感に満ち溢れている演奏となっている。(この辺りは、コンセルトヘボウ管の芳醇にして充実感タップリな響きに依るところも、大きいように思えます。)
このような演奏、大好きであります。