ギーレン&南西ドイツ放送響によるラヴェルの≪ダフニスとクロエ≫全曲を聴いて

ギーレン&南西ドイツ放送響によるラヴェルの≪ダフニスとクロエ≫全曲(1997年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

明晰を極めている演奏だと言えましょう。
音の粒が立っている。そして、輪郭線が頗る克明。冴え冴えとしていて、研ぎ澄まされた感性に裏打ちされた音楽が奏でられています。クリアで、かつ、ピリッとした空気が支配的な演奏だとも言えそう。
そのうえで、音楽が存分に躍動していて、劇的な音楽が掻き鳴らされている。そう、力感に溢れていて、ドラマティックでエネルギッシュな演奏が繰り広げられているのです。スリムな響きをしていつつも、痩せぎすな音楽にはなっておらず、ましてや冷酷な音楽などにはなっておらずに、豊穣な音楽が鳴り響いている。もっと言えば、冷静な演奏ぶりでありつつも、熱い血潮が滾っている演奏となっている。激情的にして、熱狂的でもある。

いやはや、なんとも見事な演奏であります。
そして、聴く者を惹きつける力の頗る大きな、格別な素晴らしさを持っている演奏だと思います。