スターン&ロストロポーヴィチ&ワシントン・ナショナル交響楽団によるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いて
スターン&ロストロポーヴィチ&ワシントン・ナショナル交響楽団によるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(1977年 録音)を聴いてみました。
スターンが57歳のときの演奏になります。ヴァイオリニストとして、心技体のバランスの取れている、最も充実している時期の演奏だと言えましょう。そして実際、とても素晴らしい演奏が展開されていると思っています。
それにしましても、なんと情感豊かな演奏でありましょう。全体的にやや遅めのテンポを採りながら、ジックリと歌い込んでゆくスターン。その上で、作品の呼吸に合わせて適宜テンポを揺らし、ニュアンス豊かに再現してくれています。貫禄タップリでもある。しかも、煽るべきところは、キッチリ煽ってくれている。
テクニックも完璧そのもの。響きはキリッと引き締まっている。それらも相まって、集中力の高さ、凝縮度の高さが備わっている演奏だと言えましょう。
更には、とても骨太な演奏となっている。逞しい生命力を宿してもいる。
そのうえで、ロマンティシズムに溢れている。とは言いましても、決して甘ったるいものになっている訳ではなく、決然とした演奏ぶりの中から抒情性の豊かさが滲み出している、といった感じ。第2楽章では、媚びを売らない哀愁、といったようなものを帯びている。そして、全編を通じて、コクの深さが感じられる。
ロストロポーヴィチによるバックアップも、気宇壮大であり、雄渾なもの。そして、こちらもまた、頗る骨太であります。推進力に満ちてもいる。更には、オケの「パリっ」とした音色(特に金管群)が、頗る気持ちが良い。
スターンとロストロポーヴィチという、旧ソ連生まれでありつつ西側で活躍した2人の巨匠の至芸を堪能することのできる、素晴らしいチャイコフスキー演奏。
聴き応え十分で、頗る魅力的な演奏であります。