イザベル・ファウスト&ハーディング&マーラー室内管によるブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて

イザベル・ファウスト&ハーディング&マーラー室内管によるブラームスのヴァイオリン協奏曲(2010年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

キリッと引き締まった音楽づくりであります。それは、I・ファウストのヴァイオリンにも、ハーディングの指揮にも当てはまる。
研ぎ澄まされた感性に裏打ちされた演奏。そこからは、不純物を含んでいない、純度の高さや、透明感が感じられもします。総じて、とても清新な演奏となっている。更には、なんとも明晰な演奏が展開されている。
そのような中でも、とりわけI・ファウストには、ストイックなまでの「ひたむきさ」や、高潔さや、凛とした気高さや、が備わっているように思えます。真情に溢れたものとなっている。なおかつ、怜悧な音楽づくりでもあり、ピーンと張り詰めた緊張感が素晴らしい。
内省的であって、凝縮度が高くもある。それは全楽章を通じて感じられますが、とりわけ、第2楽章において強く見て取ることができます。
しかも、全編を通じて、エッジの効いた演奏が展開されている。それでいて、充分に情熱的でもある。逞しい生命力が備わっていて、息遣いがとても豊か。現代的な感性が貫かれていながら、決してエキセントリックではない自然さが備わってもいる。
更に言えば、第3楽章での躍動感も充分。そこからは、ある種の荒々しさが感じられもします。それはまさに、ジプシー音楽に相通じるこの楽章の性格が生き生きと描き出されたものとなっている。
そのようなファウストに対して、ハーディングもまた瑞々しい音楽づくりで応えてくれている。そのうえで、繊細にして、抒情味の豊かな演奏ぶりとなっている。そのような演奏ぶりがまた、ここでのファウストの共演者として相応しく思えます。

I・ファウストの音楽性の豊かさを存分に味わうことのできる演奏。そして、ハーディングとの相性の良さが実感できる演奏となっている。
なんとも素敵なブラームスであります。