C・デイヴィス&コンセルトヘボウ管によるハイドンを聴いて
コリン・デイヴィス&コンセルトヘボウ管によるハイドンの≪時計≫と交響曲第102番(1979年録音)を聴いてみました。
ハイドンの交響曲の演奏において、このコンビによる音盤は、ヨッフム&ロンドン・フィルによるセットとともに、私の中で規範となっております。ハイドンの交響曲を聴きたくなると、棚から取り出してくる頻度が高い。
コリン・デイヴィスと言えば、堅実で率直な演奏をする指揮者であるというイメージが強いのではないでしょうか。奇を衒わずに、正攻法な演奏を繰り広げることの多い指揮者であると。
なるほど、この演奏でも、そのような特徴がよく現れていると思います。無理をするようなところは全くなく、ただただハイドンの音楽を誠実に、そして充実度いっぱいに鳴り響かせようという強い意志に支えられた演奏となっているように思えます。
その一方で、1980年頃までに発売されたコリン・デイヴィスの音盤に対する評論の中で、彼に向けられた言葉としてよく目にしたのが「熱血漢」でありました。そう、情熱的で、血気盛んな演奏を繰り広げる指揮者であると見なされることが多かった。このハイドンの演奏においても、そのようなホットな感興が存分に織り込まれていると思えてなりません。
そのような演奏ぶりによる、ここでのハイドン。それは、まさに帯に書かれている通り、「しなやかにして端然、流麗にして雄渾」な演奏となっていると言えましょう。
真摯な姿勢が貫かれている。そのうえで、生命力に溢れた、逞しい演奏となっている。重心の低い音楽づくりをベースとしながら、充実感いっぱいの演奏が繰り広げられている。それでいて、必要以上に重苦しくなることはなく、キビキビとした運動性を備えている。エネルギー量の多さが感じられもする。
そんなこんなの結果として、力感豊かで、造形が美しくて、品格の高い音楽が立ち現れている。そして、なんとも立派な演奏となっている。
聴きようによっては、武骨な演奏であると思われるかもしれません。しかしながら、ゴツゴツとした肌触りをしている訳ではなく、しなやかさを持っていて、弾むようなウキウキ感を備えている。生真面目に過ぎるようなこともない。ハイドンならではのウィットが存分に感じられ、チャーミングな音楽世界が広がっている。
そのようなデイヴィスの演奏ぶりのみならず、この演奏を魅力的なものとしているのが、コンセルトヘボウ管なのであります。このオケ独特の芳醇な響きの、なんと素晴らしいこと。分厚くて、かつ潤いがあり、そのうえで凝縮度の高い美しい響きによって敷き詰められている演奏。
純度のとても高い演奏。そして、音楽美に溢れている演奏。
このコンビによるハイドンの交響曲の録音としましては、『ロンドン・セット(ザロモン・セット)』の全12曲や、『パリ・セット』からの数曲、それ以外にも数曲と、全てで20曲ほどの作品が残されています。それらはいずれも、実に立派で、充実感タップリで聴き応え十分の、素晴らしい演奏となっています。
このコンビによるハイドン、お薦めです。多くの音楽愛好家に聴いてもらいたいと願ってやみません。