ブーレーズ&ニューヨーク・フィルによるシェーンベルクの≪浄夜≫を聴いて

ブーレーズ&ニューヨーク・フィルによるシェーンベルクの≪浄夜≫(1973年録音)を聴いてみました。

精緻にして、豊饒な演奏となっています。
輪郭線が明瞭で、実にクリアな演奏ぶり。適度にエッジが立っている。そのような音楽づくりによって、目鼻立ちがクッキリとしていて、かつ、音楽が立体的に鳴り響くこととなっています。
しかも、フルオーケストラサイズの弦楽合奏による演奏としての、響きの分厚さや、音圧の強さが、存分に生かされている。そう、押し出しが強くて、ドラマティックな演奏となっているのであります。特に、後半部分の真ん中辺りは、音楽がうねりにうねっていて、煽情的な演奏ぶりが示されていたりもする。それはもう、めくるめくような音楽世界が広がっている。
1970年代頃のブーレーズの演奏に得てして見受けられがちな冷たさが感じられず、むしろ、極めて熱い演奏が繰り広げられています。そして、とてもロマンティックでもある。
その演奏ぶりは、必要以上に豊麗になったり、妖艶に過ぎたり、といったことのない範囲で、情熱的で、彩りの鮮やかなものになっていると言いたい。そのうえで、音楽が空転するようなことはなく、規律の正しさのようなものが感じられる。

端正で明晰でありつつ、聴き手をグイグイと作品の世界に惹き込んでゆく力が大きくて、それ故に、聴き手を夢中にさせる力を持っている演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
そんな、なんとも立派で見事な、そして、素敵な演奏であります。