カイルベルト&ベルリン・フィルによるブルックナーの交響曲第6番を聴いて
カイルベルト&ベルリン・フィルによるブルックナーの交響曲第6番(1963年録音)を聴いてみました。
質実剛健な演奏が繰り広げられています。虚飾がなく真摯で、かつ、純真な演奏ぶりであるとも言えそう。
そのようなカイルベルトの音楽づくりに、ベルリン・フィルの分厚い響きと機能性の高さが加わることによって、この演奏の魅力は更に増している。ゴツゴツとした肌触りではなく、滑らかで艶やかな演奏となってもいる。そして、とても力強くもある。
そう、ベルリン・フィルが起用されていることが、この演奏の特徴づけに大きく関与しているように思えるのです。演奏ぶりには、無理が全く感じられない。自然体で、余裕をもって、音楽が奏で上げられている。それでいて、シッカリとした圧力の備わっている音楽が鳴り響いている。ズシリとした手応えを感じさせてくれる演奏だとも言えましょう。
更には、何と言いましょうか、「馬力」のある演奏となっている。この点については、特に、第1楽章において顕著に感じられます。
また、第2楽章では、陶酔感の高い音楽が鳴り響いている。
しかも、決して華美であったり、厚化粧をしていたり、といった演奏にはなっていません。むしろ、実直にして、素朴な表情をしている。そして、推進力に満ちていて、逞しさに溢れている。そう、力感の豊かな演奏が繰り広げられている。
(ここで触れた「素朴さ」がまた、この第6番に似つかわしいように思えます。)
そのうえで、句読点がハッキリと付けられた明快な音楽づくりが為されてゆく。そのために、ブルックナーならではの階段状に積み上げられてゆくような音楽世界が、ごくごく自然な形で現出している。
素朴でありつつも、適度に壮麗でもある演奏。この点については、特に、最終楽章において顕著に感じられます。
カイルベルト&ベルリン・フィルという組合せならではの美質の詰まっている、素晴らしいブルックナー演奏であります。