ショルティ&シカゴ響によるチャイコフスキーの交響曲第5番(旧盤・1975年録音)を聴いて
ショルティ&シカゴ響によるチャイコフスキーの交響曲第5番(1975年録音)を聴いてみました。
ショルティ&シカゴ響のコンビは1987年に同曲を再録音しており、当盤は旧録音となります。なお、ショルティは、1956年にパリ音楽院管とも同曲を録音していました。
さて、ここでの演奏はと言いますと、なんとも豪放で、かつ、鮮烈なものとなっています。
ショルティ&シカゴ響というコンビに対して抱きがちなイメージの通りと言いましょうか、弦楽器も管楽器もバリバリと音楽を奏で上げてゆく、といった演奏ぶりが示されています。そして、音楽が唸りを上げながら驀進してゆく。その様は、頗る痛快でもある。
なるほど、かなり力づくな演奏であると言えましょう。それでいて、粗削りといった感じはしない。無節操な演奏、といったふうにも思えない。むしろ、精密にして、ピュアで実直な演奏だと言いたくなります。そのことは、ここでの演奏が、チャイコフスキーの音楽が持っている性質に合致しているが故のことなのでしょう。この演奏における、パワフルでエネルギッシュでスリリングな音楽づくりを、この作品はシッカリと受け止めてくれている。
そのうえで、毅然とした音楽が奏で上げられています。音楽が粘るようなことがない。第2楽章ではタップリと歌い抜かれていますが、変にセンチメンタルになるようなこともない。その辺りがまた、いかにもショルティらしいところだと言えましょう。
聴き応え十分で、なんとも立派な演奏であります。
オーケストラ音楽を聴く歓び(もっと言えば、快感)に溢れてもいる。この点は、このコンビならではの魅力だとも言えそう。ここで演奏されているのがチャイコフスキーだということがまた、そういった魅力を増大してくれているようにも思える。
そんなふうなことが言えそうな、素敵なチャイコフスキー演奏であります。