シノーポリ&ウィーン・フィルによるツェムリンスキーの≪抒情交響曲≫を聴いて

シノーポリ&ウィーン・フィルによるツェムリンスキーの≪抒情交響曲≫(1995年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

実に甘美な作品であり、演奏であります。夢幻的であり、妖艶だとも言いたくなる演奏となっている。それはまさに、シノーポリ&ウィーン・フィルというコンビの美質が最大限に発揮された結果であるように思えます。
この作品は、1922年に作曲されていますが、後期ロマン派的な情緒をとどめた音楽だと言えましょう。眩いまでの色彩感を持っている。調性もしっかりと残されている。
そのような音楽を、シノーポリは精緻で明快に、しかも豊麗に再現してくれています。それはもう、めくるめくような演奏だと言いたい。そして、うねりをもって演奏されている。鮮烈で、色彩鮮やかでもある。ドラマティックで、ロマンティックであり、官能的な美しさに湛えている。
そのようなシノーポリの音楽づくりに対して、ウィーン・フィルが蠱惑的なまでに美しい響きを添えてくれているのが、なんとも嬉しいところ。実に艶やかな響きをしています。そのうえで、オケ全体が、流麗にして、しなやかさを備えた演奏が繰り広げられている。
そして、ヴォイト(S)とターフェル(Br)の2人の独唱者がまた、タップリとした歌ぶりによる豊饒な歌唱を繰り広げてくれています。それでいて、過剰にカロリーが高い訳ではない。恰幅が良く、まろやかでありつつも、清浄で伸びやかな歌となっている。そのうえで、こちらもまた誠に夢幻的。

聴いていて、うっとりとしてくる演奏。
この作品の魅力を堪能することのできる、なんとも素晴らしい演奏であります。