メータ&ウィーン・フィルによるマーラーの≪復活≫を聴いて
メータ&ウィーン・フィルによるマーラーの≪復活≫(1975年録音)を聴いてみました。メゾ・ソプラノ独唱はルートヴィヒ、ソプラノ独唱はコトルバス。
今からちょうど半世紀前に録音された当盤。録音当時、メータは40歳を目前にしていた、というタイミングでありました。
ロス・フィルの音楽監督を務めていた1970年代のメータは、手兵のロス・フィルを中心に活発な録音活動を展開していて、話題作を次々と世に送り出していました。そのような中でも、時おり、ウィーン・フィルを指揮した音盤も制作されていました。例えばそれは、当盤であったり、ブラームスの交響曲第1番であったり、シューマンの交響曲であったり、等々と。それらの多くもまた、一世を風靡したものでありました。
しかも、この≪復活≫は、メータによるマーラー作品としては国内で初めて発売される音盤だった(録音された時期としては、この後に発売されたイスラエル・フィルとの≪巨人≫のほうが数ヶ月早かった)ということもあり、大評判を取ったものでした。メータにとっては、記念碑的な録音だったとも言えそう。
さて、そんな当盤ですが、この頃のメータの美質がギッシリと詰まった、活力の漲っている充実の演奏が刻まれています。とてもアグレッシブであり、ダイナミックであり、スリリングな演奏が展開されている。
しかも、そのような気概が空回りすることなく、作品から生命力を正確に汲み上げてゆくような演奏になっていると言いたい。とても実直な演奏ぶりであり、メータの、この作品への共感の深さがダイレクトに伝わっても来る。
更に言えば、あまり情念的になるようなことはなく、快活な音楽となっているところが、いかにもメータらしいところ。目鼻立ちのクッキリとしたマーラー演奏だと言えそう。爽やかさを覚えもする。最終楽章では、とても輝かしい音楽が鳴り響いている。クライマックスでの昂揚感は、頗る大きなものとなっている。そして、全編を通じて、身のこなしがしなやかでもある。
そのようなメータの音楽づくりに対して、ウィーン・フィルならではのふくよかでまろやかな響きが、この演奏をより一層魅力的なものにしている。そして、その響きには艶やかさや、柔らかさや、光沢がある。
また、ルートヴィヒの深々とした歌唱と、コトルバスによる清澄な歌もまた、聴き応え十分。
若き日のメータと、ウィーン・フィルのコンビの魅力を存分に味わうことのできる演奏。更には、2人の名歌手の卓越した歌唱に接することができる当盤。
以前の評判を考えると、最近はあまり話題にならなくなっていることに寂しさを覚えるのですが、忘れ去られてしまうのは勿体ない、素敵な演奏であります。