コンドラシン&モスクワ・フィルによるラフマニノフの≪鐘≫を聴いて

コンドラシン&モスクワ・フィルによるラフマニノフの≪鐘≫(1962年録音)を聴いてみました。

本作は、”合唱交響曲”と謳われています。3人の独唱者と合唱とを伴う編成で、4つの楽章から成る作品となっている。純粋な器楽曲で、現在は交響曲第3番と番号が振られている作品が生み出される以前は、本作を「交響曲第3番」と呼んでいたとのこと。

さて、そのような作品に対する、ここでのコンドラシンによる演奏でありますが、骨太で、かつ、ダイナミックなものとなっています。しかも、とても明快でもあり、彩り鮮やかな演奏となっている。
冒頭楽章などでは、なんとも華やかな音楽が鳴り響いています。明朗な演奏が繰り広げられている。
その一方で、第3楽章では、激しく揺れ動くような雰囲気が、率直に表されています。特に、この楽章の後半部分は、頗るエネルギッシュなものとなっている。そこここから、逞しい息遣いを感じ取ることができる。
更には、最終楽章では、悲哀に満ちたものとなっている。過度に粘るようなことはないものの、適度に情念的でもあります。そして、最後には希望の光が差してくるかのようでもある。
そんなこんなが、実に屈託なく表現された演奏となっています。多彩でありつつも、とても見通しが良くもある。

あまり難しいことを考えずに、この作品の魅力を存分に味わうことのできる、とても素敵な演奏であります。