ハスキル&マルケヴィチ&ラムルー管によるファリャの≪スペインの庭の夜≫を聴いて
ハスキル&マルケヴィチ&ラムルー管によるファリャの≪スペインの庭の夜≫(1960年録音)を聴いてみました。
優雅なハスキルのピアノと、切れ味鋭いマルケヴィチの指揮。ここでは、ハスキルもマルケヴィチに触発されたのか、かなり色彩感の鮮やかな、鮮烈な演奏を繰り広げてくれています。
そのような中にも、暖かさが滲み出ているのは、ハスキルならではだと言えましょう。そして、音がとても美しい。しかもピュア。決して大向うを唸らせるような弾き方をしている訳ではなく、音楽が清純な佇まいを見せているのです。単に聴き手を(そして作品を)煽るのではなく、気品を感じさせる音楽がここにはある。
これぞグランドマナーが貫かれた演奏、と言えるのではないでしょうか。
そのうえで、この作品ならではの精妙な音楽世界が広がってゆく演奏となっている。ノスタルジックであり、かつ、妖しい空気感も充分。
それにしましても、マルケヴィチの感性の鋭さは驚嘆ものですよね。精密画を見ているよう。敏捷性が高くもある。しかも、端々から感情の迸りが感じられ、表情が生き生きとしている。
ハスキル、そしてマルケヴィッチ、この2人の真摯な音楽家が奏で上げた、格調の高い演奏。そのうえで、この作品の魅力を存分に味わうことができる。
聴いていて惚れ惚れとしてくる、見事なファリャであります。