キリル・ペトレンコ&バイエルン国立歌劇場管によるマーラーの≪夜の歌≫を聴いて
キリル・ペトレンコ&バイエルン国立歌劇場管によるマーラーの≪夜の歌≫(2018年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
当盤は、バイエルン国立歌劇場が立ち上げた自主レーベルのリリース第1弾として出されたものになるそうです。
2015年にベルリン・フィルの次期シェフに選出され、2019年に同ポストに就任したペトレンコですが、その直前のポストはバイエルン国立歌劇場の音楽監督。2013年に着任し、2020年まで務めていました。ここでは、その手兵を指揮しての演奏。
なんとも恰幅の良い演奏であります。スケールの大きさが備わっている。
それでいて、音楽がダブつくようなことはありません。見通しの良い演奏となっている。身のこなしがしなやか。しかも、息遣いが自然で、伸びやかでもある。全体的にスキっとした表情をしていて、音楽の佇まいが凛としている。そのうえで、ふくよかさも兼ね備えた音楽が鳴り響いているのであります。音楽の骨格がガッシリとしている、とも言えそう。
表情は生き生きとしていつつ、ある種、整然とした音楽となっている。そのために、マーラーに特有な「鬱屈とした感情」といったものは薄い。それよりももっと、健康的で、明朗な音楽となっています。と言いつつも、エモーショナルな面白味や、この作品が持つダイナミズムや、といったものにも不足はない。最終楽章などでは、冒頭から力強い音楽が鳴り響いていて、充分に壮麗で、輝かしくもある。しかも、「喧噪」といった言い方からは程遠い音楽となっている。
そのような中で、第2,4楽章に挟まれている2つの「夜の歌」では、牧歌的な穏やかさや、ものやわらかさや、感情豊かな情緒や、といったものも、過不足なく表されている。
そんなこんなのうえで、この作品が持っているエネルギーが的確に放出されている演奏が繰り広げられている。
あまり感情的にならずに落ち着いて聴くことができつつ、聴き応えの十分な演奏。
ペトレンコの確かな手腕が刻まれている、素晴らしい演奏だと言えましょう。