ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンによるブルックナーの交響曲第7番を聴いて
ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるブルックナーの交響曲第7番(1980年録音)を聴いてみました。
97歳となった今でも、演奏活動を続けてくれているブロムシュテット。これは、そのブロムシュテットが、53歳の時に録音した演奏になります。
この演奏を一言で表すならば、「美しい」という言葉に尽きましょう。それは、響きや音色においても、音楽の佇まいにおいても、当てはまる。そして、頗る爽やかで、かつ、コクが深い。
そこには、SKDの清潔感溢れる美音が大きく貢献していることも疑いないでしょう。贅肉のない、ピュアな音たち。絢爛たる響き、或いは妖艶たる響き、といったものではなく、清楚で凛とした音が鳴り響いている。それらはまさに、SKDの真骨頂。
そのようなSKDと共に、虚飾のない誠実な演奏を作りあげてくれているブロムシュテット。その演奏ぶりは、スッキリとしていて、決して重々しいものではありませんが、充分に壮麗なものとなっている。いや、美麗と言ったほうが良いでしょう。音楽の佇まいが、実に美しくもある。
しかも、活力の漲っている音楽となっている。であるが故に、壮麗さが表されている。この時期のブロムシュテットの気力の充実ぶりが、よく示されていると思えてなりません。
話は変わりますが、ブルックナーの7番は、山の景色によく似合うように思えます。雄大で、敬虔で、澄み切った音楽世界が広がってゆくために。
そこで、イタリアのドロミテ地方の山岳地でありますトレ・チーメや、スイスのインターラーケンからグリンデルヴァルドへ向かったところに聳えるフィルストを訪れた際、その山岳美ととともにブルックナーの7番を楽しみました。
その2ヶ所で聴いたのが当盤。この演奏での「澄み切った」音楽づくりが、目の前に広がる景観とシンクロして爽快な気分に浸ることができた。
トレ・チーメとフィルストでの見晴らしが、この演奏とともに私の記憶にクッキリと刻まれています。
そのようなことも含めて、私にとっては宝物となっている音盤の一つであります。
ドロミティの名所の一つ、「トレ・チーメ」
(2015/8/11に訪問)
グリンデルヴァルドからロープウェイでアクセスした「フィルスト」
(2017/8/14に訪問)