カイルベルト&バンベルク響によるモーツァルトの交響曲第39番を聴いて

カイルベルト&バンベルク響によるモーツァルトの交響曲第39番(1955年録音)を聴いてみました。

カイルベルトならではの、質実剛健な演奏となっています。朴訥としていて、昔気質な性質を持っているとも言えそう。
そのうえで、とても強靭で、足腰がシッカリとしていて、骨太な音楽が奏で上げられています。ゴツゴツとした肌触りのようなものが感じられる演奏となってもいる。
どことなく古武士を思わせるような演奏。
しかしながら、融通の利かない音楽になっている訳ではありません。推進力に満ちていて、生き生きとしていて、気風が良くて、潔くて清々しい。そして、この作品が持っている優美な雰囲気が、ちょっと武骨でありながらもシッカリと描き出されている。生硬な演奏のようでいて、十分に伸びやかで、晴れやかで、明朗な音楽世界が広がってゆく演奏となってもいる。

なるほど、オールドファッションなスタイルの演奏だと言えましょうが、そのことが却って新鮮でもあります。そう、古雅な薫りの漂ってくる演奏となっている。なによりも、音楽に対する真摯な態度が、とても尊く思える。
そのうえで、このチャーミングな交響曲の魅力を、存分に味わうことのできる演奏となっている。
独特な魅力を湛えている、素敵な演奏であります。