ケラス&タローによるシューベルトの≪アルペジオーネ・ソナタ≫を聴いて

ケラス&タローによるシューベルトの≪アルペジオーネ・ソナタ≫(2006年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ケラスは、1967年にカナダのモントリオールに生まれたチェリスト。一方のピアニストのタローは、その翌年の1968年にパリで生まれています。
フランス語圏の2人の演奏家が、ともに30代の後半だった時期に録音したもの、ということになります。

それにしましても、ケラスのなんと巧いこと。自在に弾きこなしていっています。
とは言いましても、決してバリバリと弾いてゆくのではありません。エッジを立てながら、作品に鋭く切り込んでゆくような演奏ぶりでもありません。まろやかに、滑らかに、伸びやかに、艶やかに、そして高貴に、このシューベルトの佳品を奏でてゆく。押しつけは微塵も感じられないのに、闊達でもある。息遣いが自然でありつつも、起伏に富んでいる。頗る流麗でもあり、かつ、弾力性を帯びてもいる。
そのうえで、歌心に満ちている。そして、とても美しい。
そこに添えられてゆくタローのピアノがまた、珠のように美しい。誠に清澄な音楽を奏で上げていっています。

夢見心地に誘われるような演奏。いやはや、なんとも素敵な演奏であります。

なお、ケラスは、この11月に来日して、鈴木秀美さん&神戸市室内管との共演でサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番を弾くことになっています。
さぞかし魅力的なサン=サーンスになるのであろうと、今から楽しみでなりません。