ゼーマン&ケルテス&北ドイツ放送響によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を聴いて
ゼーマン&ケルテス&北ドイツ放送響によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番(1963年録音)を聴いてみました。
44歳になる年に、イスラエルの海岸での遊泳中に高波にさらわれて不慮の死を遂げたケルテスですが、ベートーヴェンの録音が非常に少ないのは、とても残念なことであります。そのような中にあって、当盤は、そんな喉の渇きを癒してくれる貴重な存在だと言えましょう。
さて、ここでの演奏はと言いますと、誠実味に溢れたものとなっています。このことは、ピアノにも指揮にも当てはまる。
大袈裟な表現が全くなく、キッチリとした構成感の中で演奏を築き上げてゆくゼーマン。それでいて、堅苦しさはなく、音楽の流れは極めて自然。虚心坦懐たる音楽が紡ぎ上げられています。しかも、音の粒が揃っていて、キリッとしている。それでいて、響きは硬質ではなく、柔らかみを帯びている。そのようなこともあり、演奏全体から暖かみが感じられてくる。また、初期のベートーヴェンに特徴的な優美さや可憐さが存分に伝わってくる演奏となっている。
作品自体に魅力を語らせようとしているような、ここでのゼーマンの演奏ぶり。
そのようなゼーマンに対して、ケルテスは、逞しくて溌剌とした音楽づくりで応えてくれています。しかも、こちらもまた、虚勢を張らずに、作品自体が持っているエネルギーを適正に放出させよう、といった演奏ぶりだと言えそう。そのために、生き生きとしていて、かつ、誠に端正な音楽が響き渡っています。息遣いが伸びやかでもある。そのうえで、北ドイツ放送響から、端麗にして充実した響きを引き出してくれている。
作品の魅力を存分に味わうことのできる、しかも、チャーミングにして充実感いっぱいな演奏。そんなふうに言えましょう。