ピリスによるバッハピアノ独奏曲集を聴いて
ピリスによるバッハピアノ独奏曲集(1994年録音)を聴いてみました。曲目は、下記の3曲。
≪パルティータ≫第1番
≪イギリス組曲≫第3番
≪フランス組曲≫第2番
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
凛然としていて、かつ、ロマンティックな演奏となっています。しかも、雄弁でいて、頗る清冽でもある。そして、とても真摯な態度が貫かれている。
全編を通じて、繊細で、情趣深い演奏が繰り広げられています。しかも、音の粒はクッキリとしている。やや硬質(と言いつつ、潤いも感じられます)な響きが、とても美しい。そのようなことが相まって、とてもピュアな音楽が広がることとなっている。
それでいて、十分にアグレッシブであり、或る種の奔放さが感じられ、力感に溢れてもいる。
つまり、とてもニュアンス豊かな演奏となっている訳です。ピアノによるバッハならではの音楽世界が広がっているとも言えそう。
しかも、そのベースにあるのは、厳粛とした、或いは粛然としたピアノ演奏。であるが故に、この演奏を聴いての印象を「凛然」という言葉で書き始めたのでありました。と言いつつも、息苦しさは微塵も感じられない。一貫して、伸びやかな音楽が奏で上げられているのであります。キリっとしていつつも、息遣いが自然でもある。音楽が自然に呼吸しているとも言えそう。そして、温かみを帯びてもいる。そのようなこともあって、ロマンティックな感興を湛えた音楽が鳴り響くことになっているのだと言いたい。
そんなこんなのうえで、急速楽章での規律正しい音楽の進行と、緩徐楽章でのたっぷりとした歌とのコントラストが、なんとも鮮やかでもある。しかも、その切り替えもまた、頗る自然。
実に立派な、そして、多彩な魅力を湛えている演奏。
心にジッと染み入ってくる、素敵な素敵なバッハ演奏であります。