クレメンス・クラウス&バイエルン放送響によるR・シュトラウスの≪家庭交響曲≫を聴いて

クレメンス・クラウス&バイエルン放送響によるR・シュトラウスの≪家庭交響曲≫(1953年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

端正であり、かつ、豊麗な演奏となっています。キリッとしていて、凛としていて、しかも、うねりが存分に感じられる。筆致が克明でもある。そういった印象は、同年の夏にバイロイトで演奏された≪ニーベルングの指環≫と似通っています。
格調高くて、馥郁たる音楽を奏でてゆくC・クラウス。洒脱でもある。そのうえで、流動性が高く、輝かしくて、音楽が生き生きとしているのです。R・シュトラウスならではの、流麗で煌びやかで艶美な要素にも全く不足はない。そんなこんなによって、壮麗で、豊穣な音楽世界が広がることとなっている。
更に言えば、腰がシッカリとしていて、逞しくもあります。第4部でのフガートによる「子供の教育方針を巡る夫婦喧嘩」の場面などは、かなり凄絶な演奏となっている。しかしながら、決してタガの外れた演奏にはなっていないところが、なんとも見事。
オーケストラの機能性の高さにも、唖然とさせられます。力強さも十分。しかも、どんなに強奏しても、音が濁るようなことがない。

C・クラウスの音楽性の豊かさを痛感することのできる、素晴らしい演奏であります。
と同時に、創設されて僅か数年しか経っていないこの時期から、バイエルン放送響が如何に優れたオーケストラであったのかを実感することのできる演奏でもあると言いたい。
なんとも貴重なライヴ音源であります。