グリュミオー&レッパード&イギリス室内管によるバッハのヴァイオリン協奏曲第1,2番を聴いて
グリュミオー&レッパード&イギリス室内管によるバッハのヴァイオリン協奏曲第1,2番(1964年録音)を聴いてみました。
感覚美に溢れている演奏だと言えましょう。とても瑞々しくて、晴朗で、かつ、清々しくて新鮮な息吹の感じられるバッハ演奏となっています。
ほんのり甘くもある。いや、かなり甘美なバッハ演奏だと言えましょう。艶やかで、暖色系のバッハだとも言えそう。そのうえで、実に伸びやかな演奏が繰り広げられている。そんなこんなによって、厳格な顔つきをしたバッハは、ここには見当たりません。
あまりバッハらしくない演奏だと感じられるかもしれません。しかしながら、私には、そのことが不満の種にはならない。むしろ、大いに歓迎したい。なるほど、甘美で流麗で、感覚的な要素の強い演奏ではありますが、単にムードに流されるようなことはない。音楽のフォルムが崩れるようなこともない。明朗でありつつも、堅牢な音楽が鳴り響いている。それは、グリュミオーの音楽に対する真摯な態度に依るからなのではないでしょうか。同様のことが、グリュミオーによるバッハの無伴奏からも感じられ、その無伴奏での演奏もまた、私は愛してやまない。
そのような演奏ぶりであるだけに、短調の作品となっている第1番よりは、長調で書かれている第2番での演奏の方が、より一層好ましいものとなっているように思えます。
そのようなグリュミオーをサポートしているレッパードも、明快で、爽快感たっぷりな音楽を奏で上げてくれています。その音楽づくりは、ここでのグリュミオーの演奏ぶりに誠に相応しい。
晴れやかで、愉しい気分に浸ることのできる、素敵なバッハ演奏であります。