ボールト&ニュー・フィルハーモニア管&デュ・プレによるR・シュトラウスの≪ドン・キホーテ≫を聴いて

ボールト&ニュー・フィルハーモニア管によるR・シュトラウスの≪ドン・キホーテ≫(1968年録音)を聴いてみました。チェロ独奏はデュ・プレ。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

この演奏の聴きものは、何はさておき、まずはデュ・プレであると言いたい。何と奔放で、かつ雄弁なチェロでありましょうか。
自在感が半端ありません。それでいて、作品の枠からはみ出すようなところが全くない。
基本的には生き生きとした演奏ぶりでありながら、沈鬱とした表現を見せてくれたりもする。屈託がなくて伸びやかな音楽でありつつ、陰影が濃い。そんなこんなのうえで、凄まじいまでの生命力が宿っているチェロ独奏となっています。全てにおいて、体当り的でもある。
このようなチェロは、デュ・プレを置いて他に、決して聴くことのできないものだと言えましょう。それはもう、唖然とするほどに、いや、聴いていて恍惚としてくるほどに、素晴らしいチェロであります。
そのようなデュ・プレを得て、ボールトがまた、実に素晴らしい演奏を繰り広げてくれています。
力感に溢れていて、逞しくて、彫りが深くて、しかも、暖かみがあって、気品に満ちた音楽となっている。気宇が大きくて、壮麗な音楽が奏で上げられている。R・シュトラウスならではの絢爛豪華な装いにも不足はない。誇張のない範囲で、うねりを伴っていて、煽情的でもある。
そのようなこともありまして、格調が高くて、かつ、生彩感のある音楽が響き渡ることとなっている。
そのうえで、鳴り響いている音は、まさにドイツ音楽そのもの。どっしりと腰の据わった音がしているのであります。しかも、決して鈍重にならずに、爽やかさも兼ね備えている。
いやはや、なんとも見事な指揮ぶりであります。

これはもう、聴く者に破格の歓びを与えてくれる、素敵な素敵な演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。