ベーム&ウィーン・フィルによるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫を聴いて

ベーム&ウィーン・フィルによるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫(1976年録音)を聴いてみました。

なんとも風格豊かな演奏であります。ドッシリと構えた手堅い演奏ぶりが示されている。雄渾な演奏でもある。
それでいて、思いのほか若々しい。凝縮度が高くて、威厳に満ちた演奏ぶりでありつつも、音楽から勢いが感じられる。音楽が堅苦しいものにはなっておらずに、まろやかさが感じられる。覇気が漲ってもいる。過剰にお祭り騒ぎにならない範囲で、エネルギッシュであり、ドラマティックでもあります。
そのうえで、コクの深さの感じられる音楽が響き渡っている。音楽がキリっとした佇まいで屹立している、といったふうに言えそうで、造形美が感じられもする。
そんなこんなによって、壮麗にして、豊饒な音楽が響き渡ることとなっている。
そのようなベームの音楽づくりに対して、ウィーン・フィルが、柔らかくて、艶やかな響きを添えてくれていて、そのことがまた、この演奏に大きな魅力を与えてくれています。この演奏からまろやかさが感じられるのは、ウィーン・フィルに依るところが大きいのではないでしょうか。
更には、ヘッツェルによるヴァイオリン独奏も、端正にして艶美なものとなっていて、実に素敵。

個人的には、≪英雄の生涯≫と言えばブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン盤と、このベーム&ウィーン・フィル盤が、揺らぐことのないTop2。
聴き応え十分で、この作品の魅力を満喫することのできる、もっと言えば、音楽を聴く歓びを心の底から味わうことのできる、素晴らしい演奏であります。