モントゥー&ウィーン・フィルによるハイドンの≪時計≫を聴いて

モントゥー&ウィーン・フィルによるハイドンの≪時計≫(1959年録音)を聴いてみました。

モントゥーという指揮者に対して私が抱いているイメージ、それは、「万年青年」で言い表されようかと思っています。すなわち、どんなに年齢を重ねても、若々しい音楽づくりを旨としていて、逞しくて、溌剌とした演奏を聞かせてくれる指揮者、というイメージ。
しかしながら、ここでの演奏は、少々趣きを異にしています。随分と落ち着きのある演奏が繰り広げられている。
テンポは概してやや遅めで(最終楽章では、速めのテンポが設定されていますが)、全体的に、ドッシリとした構えをしていて、風格の漂う演奏ぶりが示されている。逞しさに溢れた剛毅な演奏というよりは、柔らかみに包まれている。
そのうえで、暖かみがありつつも、キリッと引き締まった表情をしている。端正な佇まいをしていて、優美でもある。
そこに、優雅で(或いは、古雅で)、柔らかなウィーン・フィルの響きが加わってくる。

オーソドックスでいて、チャーミングなハイドン演奏。
そのような印象を抱くのは、確かに、ウィーン・フィルによる貢献大とも言えるのでありましょうが、モントゥーが志向したものであるのも間違いないでしょう。それは、ハイドンが相手であるからとも考えられる。
モントゥーの演奏の幅広さを窺うことのできる、興味深い演奏であります。