クナッパーツブッシュ&パリ音楽院管によるR・シュトラウスの≪ドン・ファン≫と≪死と変容≫を聴いて

2022年12月31日

クナッパーツブッシュ&パリ音楽院管によるR・シュトラウスの≪ドン・ファン≫と≪死と変容≫(1957年録音)を聴いてみました。


クナがパリ音楽院管とコンビを組んだ珍しい音盤。
フランスのオーケストラを指揮しているということも影響しているのでしょう、普段のクナの演奏と比べると、色彩感の豊かな演奏になっているように思えます。官能的な美しさを湛えてもいる。
肌触りが、あまりゴツゴツとしてもいない。そう、流麗さの感じられる演奏が繰り広げられているのであります。
そのうえで、「うねり」の凄まじさや、深い陶酔感は、クナならではのもの。音楽が、怒涛のごとく押し寄せてくる。
そんなこんなの相乗効果によって、R・シュトラウスの音楽が持っている、めくるめくような流動感や、律動性を伴った絢爛たる音楽世界が、クッキリと現れてくることとなっています。
しかも、なんとも巨大な音楽となっている。彫琢が非常に深くもある。とりわけ、≪死と変容≫のクライマックスでは、壮麗な音楽の大伽藍が聳え立つような、威容を誇る音楽となっている。

指揮者とオケの組合せと、更には作品との組合せの「妙」が色濃く感じられる、素晴らしい演奏だと言えましょう。

ちなみに、1957年当時、DECCAは既にステレオ録音を開始していましたが、当盤はモノラル録音になります。
しかしながら、ステレオ録音ほどには鮮やかではないにしても、クリアな音質であり、この演奏の素晴らしさを味わうには、なんら支障はありません。