ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデンによる、ストラヴィンスキーの≪火の鳥≫組曲と、ブリテンの≪シンフォニア・ダ・レクイエム≫を聴いて

ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫組曲とブリテンの≪シンフォニア・ダ・レクイエム(鎮魂交響曲)≫(1976年録音)を聴いてみました。
ケンペが65歳で急逝する年に録音された演奏になります。

ケンペにとっても、SKDにとっても、珍しいレパートリーだと言えそうですが、気品に満ちた、美しい演奏が繰り広げられています。そして、その成果の大部分を担っているのは、SKDであるように思えてなりません。
SKDはここでも、清潔感に満ちていて、凛とした演奏を披露してくれています。決してケバケバしい響きではないのですが、色彩感に溢れている。特に≪火の鳥≫では、その効果は絶大。
そのうえで、ケンペは、力感に富んだ演奏を繰り広げてくれている。端正でありつつ、ダイナミックである。特に≪シンフォニア・ダ・レクイエム≫では、逞しい底力のようなものが滲み出ている。推進力に満ちてもいる。
更には、抒情性の豊かさも充分に備わってもいて、精妙な音楽となっている。全編を通じて、生気に溢れ、感興の豊かな音楽が鳴り響いている。
そんなこんなによって、なんとも美しい演奏となっています。それは、響きだけではなく、音楽が示している佇まいにおいても。しかも、作品が元来有している鮮烈さもシッカリと備えられている。それでいて、全く下品にならずに、エレガントな雰囲気に包まれた音楽が展開されている。

これはもう、別世界に誘われるようなストラヴィンスキーであり、ブリテンであると言えましょう。