ブロムシュテット&サンフランシスコ響によるニールセンの交響曲第5番を聴いて

ブロムシュテット&サンフランシスコ響によるニールセンの交響曲全集から第5番(1987年録音)を聴いてみました。

ニールセン(1865-1931)はデンマークに生まれた作曲家。フィンランド生まれのシベリウスとは同い年になります。
一方、ブロムシュテットは、アメリカ生まれのスウェーデン人。幼少の頃にスウェーデンに戻ってからはフィンランドに移ったりもしているようですが、スウェーデンのストックホルム音楽大学で研鑽を積んでいる。
そのように、北欧の血で繋がっているニールセンとブロムシュテット。ここでの演奏からは、ブロムシュテットのニールセンに対する思い入れの強さや共感の深さを、ヒシヒシと感じ取ることができます。
(ブロムシュテットは、サンフランシスコ響と全集を録音する前、1970年代にはデンマーク放送響ともニールセンの交響曲全集を制作しています。)

さて、ここでの演奏についてであります。
キリっと引き締まった演奏が繰り広げられています。そして、実に真摯な演奏ぶりが示されている。
極めて客観性の高い演奏であると言えましょう。そこからは、気高い音楽が立ち昇ってくるかのよう。そう、全編を通じて、なんとも美しい佇まいをしている音楽が鳴り響いているのであります。しかも、とても雄大な音楽世界が広がっている。更には、力感に不足はなく、推進力に満ちていて、充分なる運動性が備わっている。
ニールセンの音楽と言えば、シリアスでありつつシニカルであり、時にユーモラスな素振りも見せながら、イギリス音楽に通じるような威風堂々とした風格も持っていて、雄大な音楽風景が広がってゆく点に特徴があると考えています。ここでの演奏は、そのような特徴を、誇張なく捉えていると言えそう。ニヒルであり、シニカルであり、それでいてストイックであり、シリアスでもあり、しかも、雄渾で力強い演奏が繰り広げられている。それらは、とりもなおさず、この作品が本来的に持っている性格だと言えましょうし、そういった事柄が何の歪曲もなく、率直に表されている演奏となっている。そんなふうに言いたい。

この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏。しかも、純美な音楽世界が広がっている演奏。
いやはや、聴き応え十分で、充実感タップリな、惚れ惚れするほどに素晴らしい演奏であります。