バックハウス&C・クラウス&ウィーン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を聴いて

バックハウス&クレメンス・クラウス&ウィーン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番(1950年録音)を聴いてみました。

ベートーヴェンが書いた5曲のピアノ協奏曲の中でも、最も可憐で優美な性格を持っていると思われるこの作品。ここでの演奏は、その性格がよく表されている、典雅なものとなっています。
バックハウスと言えば、剛毅で勇壮な音楽を奏でるピアニストというイメージが強いのではないでしょうか。しかしながら、ここでの演奏は、そのような印象は薄い。むしろ、優美な雰囲気を存分に感じさせてくれるものになっている。それはすなわち、この作品の性格に則した演奏を志向したということに依るのでしょう。更に言えば、クラウスとウィーン・フィルに負うところが大きいようにも思えます。

ここでの演奏は、クラウスならではの馥郁たる薫りを感じさせてくれるものとなっています。実に気品が高い。更に言えば、背筋がピシッと伸びた音楽となっている。そう、音楽の佇まいが実に美しいのであります。そして、暖かみや柔らかみが感じられる。洒脱な音楽。そのような言葉がピッタリな、ここでのクラウスの演奏ぶり。
そのようなクラウスが奏で上げている音楽に抱かれながら、バックハウスは、剛毅さを強調するよりも、優美さを優先させる演奏ぶりを示しています。音の粒が揃っていて、丸みを帯びていてコロコロとしている。それは、とてもチャーミングなもの。決して大柄な音楽を奏で上げようとしていない。そして、暖かみや柔らかみが感じられる。真珠のような、無垢で気品のある美しさが備わっている。
(これらは、ベーゼンドルファーの特徴であるとも言えましょう。)
そのような音を駆使しながら、慈しみのある演奏が展開されています。格調高くもある。音楽全体に、喜ばしさや、躍動感が備わってもいる。
そのような中でも、例えば、第1楽章のカデンツァや、最終楽章の中間部などでは、バックハウスならではの剛毅さが顔を覗かせてくれます。その辺りのバランスの良さがまた、なんとも魅力的。
そして、そのような2人を包み込むウィーン・フィルの優雅な響きの、なんと素敵なこと。
そんなこんなのうえで、優美さの中にも、ベートーヴェンならではの意志の強さも、しっかりと感じられる。

実に見事な、そして、なんとも魅惑的な、素晴らしい演奏であります。