マズア&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるベートーヴェンの交響曲第2番を聴いて
マズア&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管が1970年代に制作したベートーヴェンの交響曲全集から第2番(1972年録音)を聴いてみました。
マズア(1927-2015)は、ゲヴァントハウス管と1990年前後にもフィリップス・レーベルにベートーヴェンの交響曲全集を録音していますが、これは、彼らにとって1回目の全集となっているものからの演奏になります。
誠実にして、堅実な演奏であります。
虚勢を張ったようなところは、微塵も感じられない。刺激を求めようとしても、それは無理なこと。ここにあるのはただ、初期のベートーヴェンが創作した音楽の等身大の姿だと言えましょう。そのために、安心してこの作品の音楽世界に浸ることができる演奏となっています。
と言いつつも、個性のない演奏かと言えば、さにあらず。ズシリとした安定感に貫かれています。響きは、頗る充実している。それでいて、極度に重苦しくなく、清々しくもある。そう、ずっしりとした手応えがありつつ、優雅でもあり、純真とも言えそうなベートーヴェン像が描かれているのであります。そのことがまた、この作品に似つかわしい姿を描き上げてくれている。
そのうえで、細やかなニュアンス付けも、誠にチャーミング。しかも、力感も十分に感じられる。作品が宿しているエネルギーが、シッカリと放出されてもいる。
更には、オケの音質も、芯がシッカリとしていながらも柔らかくて、弦と管のバランスが絶妙。ほどよくブレンドされていて、その響きは、惚れ惚れするほどに美しい。
じっくりと耳を傾けながら、作品の魅力を堪能できる演奏。それは、ここでの第2番に限らず、このマズアによるベートーヴェンの全集に共通して言えることだと思っています。
このベートーヴェンの全集、今となっては存在感の薄いものとなっていると言えそうですが、素敵な演奏が集まっています。多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい全集であります。